ヘルクレス座の矮新星 2010

春の星座として知られるヘルクレス座の端に、矮新星と思われる明るい天体の増光が発見されました。
矮新星とは、近接連星系の円盤上にガスが降りつもることにより、円盤の温度が急上昇して間欠的に明るくなる、という変動を示す天体です。
発見したのは、山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんです。
札幌の金田宏(かねだひろし)さんと共同で進めている彗星捜索の一環として21cm F3反射望遠鏡で撮影した画像から、11月21.35954日に12.0等(CCDノーフィルター)まで増光している天体を発見しました。
その後、60cm反射望遠鏡による確認・測定の後、発見が報告されました。
ヘルクレス座の矮新星の周辺星図この位置には、20等程度の暗い星があります。
この天体はSloan Digital Sky Surveyと呼ばれるサーベイ観測が行われた際に得られたスペクトルなどの様子から、「激変星」ではないかと考えられていました。
激変星とは、低温星と白色矮星からなる近接連星系において、低温星の物質が白色矮星へと流れこむ質量輸送が起きている天体です。
超新星爆発の一部や新星爆発、矮新星増光などは激変星の一部が引き起こしている現象だと考えられています。
この矮新星は、増光していないときの光度が20等前後であることから、増光した範囲は約8等ということになります。
これは、矮新星の増光としてはひじょうに大きいもので、矮新星の中でも「や座WZ型矮新星」と呼ばれるサブグループに属する天体である可能性があります。
「や座WZ型矮新星」は、矮新星の中でも増光の間隔や範囲が大きく、増光が長く続くことで知られています。
しかし、その後Andreev Maksymさんが23.111111日に観測したところでは、13.5等(R等級)と、発見当初に比べるとずいぶんと暗くなっています。
これは、増光した際には1か月以上にわたって明るい状態が続く「や座WZ型の矮新星」にしてはやや異例です。
また、カリフォルニア工科大学のA. Drakeさんによれば、Catalina Sky Surveyというサーベイで2005年にもこの天体の増光らしきものがみられたことが報告されています。
このときの増光は数か月にわたっていますが、明るさとしては今回の増光に比べるとかなり暗く、18等程度までしか明るくなっていません。
いずれにせよ、矮新星としてかなりユニークな天体である可能性が高く、これからの挙動が注目されます。
(VSOLJニュースより)

(下の写真で直線の交点にあるのが新星です)

2010年12月4日宵(2010 12 04.35145UT),40秒露出
撮影地:香取天体観測所
機材:23.5cm(F6.3)シュミカセ+CCD

<精測位置>  
2010 12.04.35145UT (40秒露出) (UT表示
赤径 01h 05m 01s15 ,赤緯 +20°30' 59".1, CCD光度 13.5等(出典星表:UCAC3 )
測定者:野口敏秀

<<撮影者のコメント>>
撮影時刻は17時26分・・・まだ薄明中で、高度僅か5度。
位置測定には、かなりの誤差があります。 強烈な画像処理を施し、やっとその姿が現れました。


撮影者: 野口敏秀




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